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❅·̩͙33 ページ33

まだ朝だというのに
異様に暗かった。



カーテンが全て閉め切られ、四角い液晶から漏れる
淡い光だけが視界を照らす。
こんなに陰気な場所ならキノコが生えていてもおかしくないなと
呑気に考えていたら、隣を歩く男がある部屋の扉を開けた。



「 好きにしていいって言われてんだよね 」



雰囲気あるでしょ、と入らされた部屋は
毒々しい桃色が一帯を染め上げている。
やけに大きなベッドにソファ。
サイドテーブルに置かれた水と、避妊具。



さすがBEAST(野獣)なだけある。
さっきふっかが投げかけていた挑発は
あながち間違いじゃないかもしれない。



「…一応聞くけど、女の経験ある?」


「 馬鹿にしてんの?笑 あるから。良くしたげるよ 」



一応言っておく。
私は、無い。



目の前の男が私をどう思っているか知らないが
さすがに初めての経験をこいつで済ませるのは
とてもじゃないが耐えられない。
どうにかして逃げたい。



迫ってくる不快な顔面から後ずさりして
辺りを見回すけど、出られそうな場所は見当たらない。
そもそもこの部屋を出られても
他に潜んでいる野獣に捕まって終わり。



絶望的だ。



もう下がれない。
部屋の最奥にあるベッドに足が当たって
そのまま体重をかけて押し倒される。



嫌だ、絶対嫌だ。
こんな、何の関係もないただのキモいオッサンに。



ネクタイが解かれる。
上から順にボタンが外されてく。



相手の息が勝手に上がってくのが気持ち悪くて目を閉じた。
こいつはそれを諦めと見なしたのか、私の首筋に顔を埋めて。



舌が這う。生暖かい感触が上へ上がってきて
屈辱で涙が出そうになった。



扉の向こうから、騒ぐ声が聞こえた。
全神経を耳に集中させてその声を探る。
もしかしたら、とありはしない期待をして
目の前の現実から逃げようと。



『触んじゃねぇよ!!』



扉が蹴破られる勢いで開いた。
閉じた目を現実に戻したら、



私の上にいた男が吹っ飛んで行った。



開いた瞼から無意識に零れた涙。
滲んだ視界に入り込んだ揺れる青い雪が
私を引っ張り起こす。



『わりぃ、遅くなった』


「…大丈夫」


『嘘つけ』



起き上がった私の頭のラインにちょうど
渡辺の胸があって、優しくそっと引き寄せられる。
不器用な手つきで何度か頭を撫でる仕草に
余計に涙が滲んだ。



彼以外の誰かが誰かを殴る音が聞こえる。
全て終わって渡辺が離れた時
私の上にいた男はベッドの下で伸びていた。

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hrr - おもしろくて一気読みしました!続き楽しみにしています! (4月10日 14時) (レス) id: 5934ce0412 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作成日時:2024年3月20日 19時

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