おそろい ページ8
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『おそろいにしたい』
そうAに言われたのはいつだっただろう。
子供みたいな寝顔を晒すAの、左の耳たぶにそっと触れる。
高校時代、付き合って3ヶ月も経たない位だったかな。
『涼太も翔太も、ピアス開いてんだね』
「同じ病院で開けたんだよ」
翔太がそう答えると、なにか考えたあと立ち上がる。
『...ふーん。ちょっと自販機行ってくる』
と言って教室を出るA。
「あ、俺お茶」
廊下に繋がる窓から顔を出してさりげなく飲み物を頼む翔太に片手だけサッとあげて、だるそうに廊下を歩く後ろ姿を見つめた。
なんか、怒らせちゃったかな。
そうおもったけど戻ってきたAはいつも通りで、しっかり翔太のオレンジジュースのお金を請求していた。
＿＿
『りょうた』
付き合って3ヶ月記念日。Aの家でお家デートしている時。
当時の少し高めの、舌っ足らずな声で呼ばれ振り返ると、ピアッサーを持ったAがいて。
『涼太と同じところ、開けて欲しい。』
大切なAの身体に穴を開けるのだ。簡単に「いいよ」なんて言えなかったけど、おねがい、ときゅるっとした目で見つめられて頷いた。
「なんで急に開けたいって言ったの？」
『....いいなあって』
「うん？」
『涼太と翔太がどこまでも一緒でずるい。』
重くてごめん。そう謝るAをぎゅうっと抱きしめる。
「全然重くないよ。」
『ほんと...？』
「うん。嫉妬してくれたんだよね？」
『っちが！....くない、です...』
「ふふ、嬉しい。」
かわいい。そう耳で囁いて身体を離す。頬に片手を添えて、もう片方にピアッサーを持つ。
『いたい、？』
「俺は病院で麻酔してもらったから大丈夫だったけど...」
正座をして膝の上に置いた手はぎゅっと握られていて。
「やめる？」
『やだ。』
「でも、」
『涼太とおそろいにしたいの』
恋人からのそんな言葉に心がきゅんとなって、耳にセットする。
怖いのか身体がガッチガチだ。違うことに意識を向けたら少しは怖くなくなるだろうか。
目を瞑るAを見て、ふとキスしたいなって思った。初めてのキスはもっと大事にしたい。けど、俺にはそうすることしか思いつかなくて。
ちゅ、なんて音と同時に、カシャンと音が鳴った。
今思えば、初めて唇を合わせたのはこの時だったな。
「空いたよ。頑張ったね」
『あり、がと....今、』
「ごめん、」
『ううん。』
真っ赤な顔でもっかいして、なんて言うAはとても可愛かった。
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作者名：東雲 | 作成日時：2023年2月4日 1時
