君だけ ページ12
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両耳から流れるSnowManのバラード。みんなの歌声も素敵だけど、やっぱり涼太の歌声は癒されるなあって思う。
いつもおうちでごはんを作るけど、たまにはいいよねってことで今日は外食することになった。しかも待ち合わせなんかしちゃって、デートの醍醐味と言えばこれだよね！とワクワクしながら彼を待つ。
そんな浮かれ気分の中。トントンと肩を叩かれて、イヤホンを片方とって振り返ると背の高い男性2人の影が顔に落ちる。
「お兄さんすいませーん」
『はい？』
「道案内？してほしくってぇ」
今どきの若い人っぽいのに、スマホの地図見たりしないんだなあ....なんてどうでもいいか。
目的地が分からないと案内しようがない。どこ行きたいのかを聞くと、予想もしない返事が返ってきた。
「お兄さんの行きたいとこ？」
『は？』
「てか俺らと遊ぼーよ！」
「お兄さんならイケるかも♡」
俺の顔を品定めするようににやにやしながら言う男性2人。
どうやら道に迷ってる訳じゃ無さそうだ。
「ホテルとかさ、行っちゃう？」
『すいません、待ち合わせしてるんでもういいですか？』
ただのだる絡みだと確信して、早くどこか行って貰うよう冷たくあしらう。
涼太には申し訳無いけど集合場所変更してもらおう。そう思ってスマホをポケットから出そうとすると一人には肩を組まれて、もう一人には腰に手を回されて。
「ちょ、どこ行くの〜？」
「何、連絡先教えてくれんの？笑」
『っ、やだ、離し』
「A！」
するりと腰を撫でる手を退けようとしたときに聞こえた俺の名前を呼ぶ愛おしい声。さらに姿が見えると妙に安心して。金髪に染めたサラサラの髪を靡かせて走るその姿はまるで王子様だ。
「お？お兄さん知り合い？」
「待ち合わせしてたの？言ってよ〜」
言っても聞かねえのはそっちだろうが。心の中で思わず口が悪くなる。
心配そうに俺の姿を見る涼太。視線が俺の腰に回る男の手に移ると、眉をひそめてじとりと汚いものでも見るような目で2人を見る。
それに怯んだのか2人はようやく離れてくれて、その瞬間に涼太は俺の腕を掴んでそのまま歩き出す。
かわいいお兄さんまたね〜！なんて後ろから声がすると歩くスピードが早くなる。人混みの中、俺の手を引っ張る涼太について行くのと、早く状況を説明したくて必死だ。
『りょ、た、あの、』
「ご飯はまた今度」
...これはまずい。滅多に怒ることが無い涼太を、俺は怒らせてしまったようだ。
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作者名：東雲 | 作成日時：2023年2月4日 1時
